ブランド エクイティとは?
ブランド エクイティとは、認知度の高いブランド名が商品提供に与える付加価値のことです。ブランド エクイティを表現する言葉としては、他に「影響力」、「良好な地位」、「商業的価値」などがあります。ブランド エクイティは、顧客が最初にブランド名を認識する必要があるため、ブランド再認と関連していますが、異なるものです。これは、ブランド エクイティがブランド名が製品に与える付加価値を重視するためです。
例を挙げてみましょう。ドラッグストアでは、さまざまな種類の頭痛薬が販売されています。ドラッグストア直営のブランドもあれば、ブランド保有企業が作った認知度の高いブランド名を持つものもあります。
各製品は、よく見てみると同じ成分である場合もあるでしょうし、使用すれば同じ結果が得られるかもしれません。しかし、あるブランド製品は、消費者の心の中で、より強い「地位」(ブランド エクイティのレベル)を保持しているかもしれません。このようなブランドは、消費者の購買意思決定に影響を与えます。このため、ブランド製品を保有する企業は、販売面で優位に立つことができます。
ブランド保有企業は、ブランドである製品の価格を上げれば、さらにブランド エクイティを活用することができます。成分や中身が同じである場合、ブランド品とノーブランド品の製造原価は理論上は同一のはずです。しかし顧客は、製品本体だけでなく、ブランド名のために追加料金を支払うことを選択するため、ブランド企業は利益率を高め、業界のより強い市場シェアを獲得することができるのです。
ブランド エクイティの構成要素
ブランド エクイティは、顧客がブランドをより個人的に認識するようになることで発生します。顧客はまずブランドの存在を知り、次に自分たちとの交流を通じてブランドに対する肯定的、否定的な意見を形成し、最後に潜在的な価値観としてブランドを連想するようになります。
1.ブランド パーセプション
ブランド パーセプションとは、その製品やサービスを象徴していると顧客が考える対象のことです。ここで気をつけたいのは、ブランド パーセプションは、ブランド を所有する企業が対象の商品を象徴していると考える内容とは必ずしもイコールではないということです。
イェール大学経営大学院のラヴィ・ダール教授は、「マーケティング担当者はどんな製品についても1週間に70時間は考えているが、消費者は7秒しか使っていない」と言います。
企業は、マーケティング・キャンペーンやスローガン、あるいは望ましい連想によってブランドに対する印象を形成しようとすることができますが、結局のところ、消費者のブランドに対する印象は消費者自身が作り上げるものなのです。これは、次のようなサブステージで発生する可能性があります。
- ブランド再認 – ブランド は、製品が特定のブランドに属していることを識別するための認識可能な特徴を持っています。例えば、Go-Compareのテレビ広告は、特定のロゴ、一貫したブランドアンバサダー、キャッチーなジングルを特徴としています。ブランドの知名度は、私たちの意見に大きな影響を与えます。ブランドが有名になれば、再認される価値も高くなります。その結果、そのブランドはより高いブランド・エクイティを持つことになります。
- ブランド認知 – ブランドが何を象徴しているのか(独自のセールスポイント)を知っていることは、ブランド製品に対する顧客の認知に影響を与える親近感と透明性のレベルを提供することができます。例えば、iPhoneやアップル社の製品について知っている人は、競合他社 の携帯電話よりもiPadの方に、より確実で安心感を覚えるはずです。ブランド再認が機能に関するものであるのに対して、ブランド認知は知識、価値観、信念に関するものです。
2.プラスとマイナスの効果
顧客ブランドをどのように認識するかは、そのブランドに対する行動に直接影響を与える可能性があります。顧客の反応は主観的であり、様々な要因に基づく可能性があります。
- カスタマー エクスペリエンス : ブランドの製品に対するポジティブなユーザー エクスペリエンスは、そのブランドに対する好感度を高めることができます。(アップルがなぜ多くのアップルストアを持ち、そこでブランド製品をすべて扱って使えるのか、そしてなぜ簡単に勝てるゲームがプリインストールされているのか、おわかりになるでしょうか?)
- 品質 : ブランド名は、優れたサプライチェーン、評判、信頼レベルに関連しています。レゴ・グループは、製品、ガバナンス、リーダーシップ、財務実績、どれだけ革新的か、そしてどのように”市民権”を得てきたかなど、複数の指標にわたる実績に基づいて、世界で最も評判の高い企業のリストのトップに何度も輝いています。
- 顧客の好み : 顧客はそのブランド製品を自分自身で使うでしょうか?販売の成功は、このブランドが顧客の信念や価値観を表しているか、また、顧客の生活の中で簡単に使用できるかどうかにかかっています。嗜好は、より感情的な理由によるものかもしれません。英国のシリアルメーカーであるケロッグは、1920年代に発売され、パッケージに描かれた強力なブランド マスコット キャラクターで子どもたちを惹きつけました。ケロッグの朝食用シリアルで育った顧客は、製品から子ども時代や家庭を強く連想することでしょう。
消費者がブランドに対してポジティブな反応を示した場合、その製品を購入したり、ソーシャルメディア上でそのブランドを推奨したりすることで、ブランドを所有する企業の評判と収益の向上につながる可能性があります。逆にブランドがネガティブに受け取られた場合、顧客の反応は製品のボイコット、軽視、批判などに転じる可能性があり、逆効果になるリスクがあります。
3.ポジティブ/ネガティブ値の理解
ブランド認知のプラス・マイナスのイメージから得られるものは、有形価値と無形価値の2つに分類されます。
- 有形価値とは、簡単に測定できる結果であり、多くの場合、物理的なものです。プラスの有形価値の例としては、販売数の増加による収益の増加が挙げられます。負の有形価値の例としては、製品の販売能力に対する信頼が失われた結果、会社の株価の価値が低下することが考えられます。
- 無形価値とは、追跡や再現が容易でなく、物理的ではないものです。プラスの無形価値は、口コミによってブランドの認知度や好感度が上がることです。負の無形価値は、例えば一定のブランドが「危険」「悪趣味」である等のイメージ/ 認識に繋がります。
ブランド エクイティの開発によるメリット
より大きなマーケットシェアを開拓することができる : ブランド エクイティを発展させることで、市場での競争力を高めることができます。飽和状態の業界では、独自のセールスポイントや明確なブランディングによって、ブランドを目立たせ、顧客にアピールする必要があります。販売時に顧客の記憶に残ることができれば、製品を成功裏に販売できる可能性が高くなります。
プレミアム価格設定ができる:プレミアム価格とは、相対価格とも呼ばれ、製品の販売価格がベンチマーク価格(この場合は製品の市場平均)を上回る、または下回る割合のことです。ブランド エクイティが優れていれば、製品の価格を高く設定することができ、市場平均よりもプレミアム価格の割合を高めることができます。これは、製品の財務パフォーマンスを測定するための総合的な指標となります。
製品ラインを簡単に拡張することができる:ブランド エクイティが高ければ、顧客はその製品を発売している企業との取引を継続し、最新の製品やサービスをいち早く試す可能性が高くなります。製品開発の段階で顧客コミュニティに試用を依頼したり、直接市場に投入して顧客に購入してもらうことも可能です。
企業としての影響力が拡大する:収益が増え、市場での優位性が高まると、市場への強力な影響力を持てるようになります。その高いブランド力を利用して、新たなパートナーシップを構築したり、より良い仕入れ価格を探したり、他の大手ブランドと「肩を並べる」価値があると認められたりします。これは、他の方法では利用できないコラボレーション、ビジネスベンチャー、または投資の機会への扉を開く可能性があります。
ブランド エクイティのプラスとマイナスの企業例
製品・サービスによっては、ブランド認知はポジティブとネガティブの間を行き来し、それに対応したポジティブまたはネガティブな行動や価値観が生まれます。
ザ・ コカ コーラ カンパニー
コカ コーラのブランド価値は推定838億ドルで、キューバと北朝鮮を除く世界のすべての国で販売されています。過去の製品では、若年層向けにラベルのパーソナライゼーションを提供し、クリスマスを迎えるために赤いスーツを着たサンタを起用したクリスマス広告を作成し、過去のキャッチフレーズはポジティブな体験を強調しているなど、常に顧客の生活に合わせて適応しています。”Make it real” (2005), “Open happiness” (2009), “Taste the feeling” (2016)など、ポジティブな体験を強調するキャッチフレーズを発表しています。
ブランド エクイティが優れているということは、顧客がそのブランドを十分に信頼して新製品を試してくれるという確信のもとに、企業はそのブランド内で製品ラインナップを増やすことができます。コカコーラは、製品の拡大を通じてこれを実現し、今日では 20 以上のブランドを所有しています。
WW(旧ウェイトウォッチャーズ)
ポジティブな変化を起こそうとしたときに、反発や否定的な意見に直面した企業の例もあります。
2008 年、当時 ウエイトウォッチャーズ と呼ばれていたこのダイエット会社は、一般的な健康やセルフケアに焦点を当てようと、社名から「ウエイト(体重)」という言葉を削除し、「Wellness that works」というキャッチフレーズを加えてリブランディングを行いました。
この変化は時代の変化に対応するものだった一方で、その変化に対する反発から顧客エクスペリエンスがマイナスになり、株価も下落しました。失われたブランド再認度を回復するために、WWはアプローチを変え、「Weight Watchers Reimagined」となりました。
ブランド エクイティの測定方法
ブランド エクイティには、財務指標、強み指標、消費者指標の3種類があり、これらをトラッキングする必要があります。
- 財務指標:経営幹部は、ブランドが健全であることを確認するために、常に黒字の貸借対照表を見たいと思うでしょう。データから、市場シェア、収益性、売上、価格、成長率、顧客維持コスト、新規顧客獲得コスト、ブランディング投資などを推定することができるはずです。確かな財務指標のデータを使って、ブランドがビジネスにとっていかに重要であるかを示し、成長を続けるためのより高いマーケティング予算を確保することができるのです。
- 強さの指標:強いブランドは、変化にもかかわらず生き残る可能性が高く、より多くのブランドエクイティを提供します。ブランドの認知度や知識、手に入りやすさ、顧客ロイヤルティ、保持力、ライセンス発行の可能性、そしてブランドの「話題性」を追跡する必要があります。また、ソーシャルメディアを監視し、一般の人々に対して調査を行い、ブランドがどのように知られ、愛されているかを把握する必要もあります。
- 消費者指標:ブランドを構築するのは企業ではなく、顧客です。消費者の購買行動やブランドに対する感情を追跡することが重要です。調査やソーシャルメディアのモニタリングを通じて、ブランドの関連性、感情的なつながり、価値、ブランド認知を追跡・測定します。特に、オープンテキストのコメントを解釈できる適切なテキスト分析ソフトウェアは、センチメントや提案を収集するのに有効です。
ブランド エクイティの構築方法
ブランド・エクイティとは、企業にとってのブランドの価値のことです。これは、しっかりと確立された評判の良いブランドは、一般的な同等品よりも成功するという考えに基づいています。これは、顧客の認識に基づいています。顧客は、自分が認識し、信頼する製品を購入する傾向があります。顧客が認識し、深い心理的な結びつきを感じるほどブランドが認知され、信頼されている場合、ブランド・エクイティは実に貴重なものとなります。
ここでは、ブランド エクイティを構築するための4つの戦略をご紹介します。
1.ブランドの認知度向上
顧客が商品やサービスを探しているときに、ブランド アイデンティティを認識し、発売側の意図したとおりに受け止めてもらえるようにすることが必要です。そのためには、以下のような方法があります。
- 同じロゴや画像を使用し、ブランディングの統一を図る
- 良好なカスタマー サービス
- ブランドにまつわる心温まるストーリー
- ブランドを市場で前面に出し続ける
- 継続的な価値の提供
- メールやニュースレターによる連絡の維持
- ソーシャルメディアを活用し、ブログ、ツイート、Facebookグループ、Instagramの写真をより多く共有すること
- 口コミ、顧客の好感度、ターゲットマーケティング。これらすべては、ブランドの認知度向上に役立ちます。
2.ブランドの意味や象徴を伝える
物理的なニーズだけでなく、社会的、心理的なニーズも含めて、顧客のニーズにどれだけ応えられるかを考えてみましょう。有用な製品を生産し、社会的・環境的責任に真摯に取り組む企業は、そうした価値観を共有する顧客や従業員を惹きつけ、支持者となるに十分なつながりと熱意を持つことができるのです。
例えば IKEA は、事業活動全体を通じてサステナビリティに投資しています。木材の50%は持続可能な資源から調達し、綿花は100%Better Cotton基準を満たし、70万個のソーラーパネルで店舗の電力をまかなっています。このようなエコ認証により、顧客の心にポジティブな印象を残します。
3.顧客の好感・判断の醸成
顧客が製品に対して温かい感情を抱けば、その製品のファンとなり、好意的な口コミをしてくれる可能性が高くなります。ブランドの信頼性、能力、品質、ニーズとの関連性、競合に対する優位性などが判断されるため、これらすべての整合性を維持することが重要なのです。ポジティブな感情とは、興奮、楽しさ、仲間からの承認、安心、信頼、自尊心などです。
ポジティブな判断や感情を維持できるブランドは、市場競争に強くなります。例えば、iPadを考えてみましょう。実際に見て、機能を理解する前に、消費者は「これは必要だ」と思ったでしょうか?しかし今日、多数の消費者にとって、iPadはコンピュータであり、ゲーム機であり、テレビであり、ラジオであり、目覚まし時計であり、モバイルバンクであり、メッセージサービスであり・・・人々はiPadを愛しているのです。
4.顧客と強い絆で結ばれたロイヤルティを構築する
これは、ブランド エクイティの強力な要素であると同時に、達成するのが非常に困難な要素でもあります。ロイヤルティの高い顧客とは、ブランドと心理的な結びつきがある顧客のことです。これらの人々は、ブランドのポジティブな面に魅かれ、繰り返し購入します。この人々は、消費者同志のコミュニティの一員であるとさえ感じているかもしれません。この人々はソーシャルメディア、オンライン・フォーラム、さらには物理的なイベントを通じて、製品を「販売」することに一役買い、ブランド大使として活動します。このため、ブランド エクイティの一部として顧客とのつながりを確立することは、非常に重要です。
関連資料
- ブログ記事「The Year of Agility:今、求められるアジャイル」
- eBook 『ジャーニー・セントリック思考の「5 つの質問」』
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